2012年02月09日
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三百字小説『スーパーウーマン・電子の洋裁』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 「私は未来から来た子孫です。ダメなあなたのせいで、子孫は困っています」

 いきなり見ず知らずの相手に言われて困ってしまった。

 「未来を変えるために、コンピューター制御の未来の電子ミシンを差し上げましょう。どんな洋裁もこなす欧州製ですよ」

 そのミシンにはあらゆる欧州の国家の洋裁データが入っていて、どれでも一瞬で作り上げた。

 私は、有頂天になって作品を自慢した。子孫が嘆くことはない。私は立派な人間に生まれ変わったのだ。

 マスコミの取材に私は叫んだ。

 「私は何でも作れる!」

 インタビュアーの人気演歌歌手がすぐに喜んで答えた。「じゃあ、次のステージ用の和服を頼む」

 欧州製のミシンに和服のデータは入っていなかった。

(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦